皆さんご存知、ムッシュこと、かまやつひろし氏の自伝的半生が綴られた文庫本。
幼少時の思い出から現在までの自身のミュージシャンとしてのキャリアが語られている。
スパイダース時代のエピソードなどは多少なりとは耳にしていたが、こうして活字でガッツリまとめて読めることはありがたい。
GSブームが下火になりスパイダースが解散。ソロとなり時代の流れは次第にフォークへ。
吉田拓郎を口説き落としてからの「我が良き友よ」の誕生。
レコード会社や所属事務所による戦略によって、大ヒット曲となるまでのエピソードは大変興味深かった。
瀬尾一三さんのアレンジもよかったし、高中正義さんのあのギターのイントロも決定的だった。あのイントロは、”書き譜”、つまり、誰かが考えて初めから譜面に書かれていたのではない。高中正義が、その場で、即興で弾いたものなのだ。 ポップスのような”3分ミュージック”は、イントロですべてが決まるといっても言い過ぎではない。とっさにあの素晴らしいフレーズを弾いてくれた高中さんは、やはりスゴイ。
あの曲が売れたのは、拓郎の読みの正しさ、アレンジ、ミュージシャンの腕……それに加えて、ビジネス戦略のおかげでもあったのだ。
ということで、高中正義の「我が良き友よ」のイントロを求めて、シングル発売当時の音源を探したのだが”Youtube”には無い!
フジのCSでやっていた「Char meets ???? ~TALKING GUITARS~ MUSEUM」でホスト役のCharもぶっ飛んだ、ムッシュかまやつのコードセンス。
かまやつさんの出演回の動画が過去に何度か、”Youtube”にアップされていたのを見たけど、現在は削除されている模様。誰かまた投稿してくれ!
「我が良き友よ」のB面に収められた「ゴロワーズを吸ったことがあるかい」。
あの、タワー・オブ・パワーがバックだというのは超有名な話。
当時、来日中の彼らに一緒にやってみたかったという思いで、ダメもとで打診したところ、まだ曲も出来ていない段階ですんなりオーケーの返事をもらったとか。
しかたなく、コード進行だけ書いてわたしたら、彼らが器用にアレンジして、ここからここまでが歌の部分、みたいな指定まで付けて演奏してくれた。狙いどおり、ファンクっぽいサウンドになっている。ぼくはそのカラオケを聴きながら詩とメロディをあとからつけていった。よく詞先とか、メロディが先にできるとかいわれ、そのパターンは人により、場合によって違うものだが、ぼくの場合は、”コード先行型”なのだ。
ゴロワーズを吸ったことがあるかいが広く注目を集めるようになるのは、「渋谷系」というムーブメントが起こる20年もたってから。ロンドンのクラブでよくかかっていたことがきっかけだったらしい。
かまやつさんの音楽センスが時代の先端のはるか先の先を、そのまた先の先の先くらいを行っていたということなのか?
角川映画『戦国自衛隊』(79年) ムッシュはレイバンに長髪で自衛隊員を演じている。
角川映画の制作費に宣伝費はハンパじゃなかった。封切り当時、物凄い話題になったことは覚えているが映画そのものは観ていない。
今回、興味半分かまやつさん見たさで観ていたらついついストーリーにのめり込んで、いつしか、かまやつさんそっちのけで最後まで観てしまった。
映画館のでっかいスクリーンで観たら相当迫力ありそう。面白かった!
この映画でのエピソードも壮大なストーリーとは裏腹に、かまやつさんならではのおもしろさが本にある。
かまやつさん世代で若いミュージシャンたちからも支持される人はそういない。
還暦を遥かに過ぎてなおも第一線で活躍し続けている稀有な存在。
この人の作った曲、今聴いても古臭くないよね。
一家に一冊、ムッシュ!おすすめです。
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